以降、30数年来に目立った情報の更新は無かったのだが、今回、中島らもの遺品から新たに発見された音源群には、P.S.F.盤の制作時には無かったスタジオ録音の資料も含まれていた。アンソロジー的に音源を集めた前者の編集方針から、更に一歩踏み込んで角谷の実像に迫るために、我々は『’87 KAD 3:4:5:6』と題されたデモ・テープを完全復刻とする。残念ながら親族と連絡がつかない状況にあり、もし心当たりのある方がいたらお知らせをいただけると幸いである。また、一次資料として肉筆のアルバム・カバーの掲載をした。彼の筆跡と文体がそのまま楽曲に反映されていると思えるし、歌詞と曲順にこだわりを見せた、この完成度の高いテープに鋏を入れるのは野暮と思えたからだ。「今の曲は歌詞が間違って聞こえたので注意してくれ!」(6曲目「エスケイプ・ア・ウエイ TAKE1 」末尾を参照。カバーにも同様の注記がある。彼が声と意味の齟齬に人一倍に鋭敏だった証左だが、いずれの曲も歌詞の完全な聞き取りは不可能である)。