ジェイムス・ブラウンが1973年にリリースした2枚組アルバム『The Payback』。70年代のJBを代表する一作にして、ファンク史でも屈指の重要作である本作は、もともとは映画のサントラ用に書かれたが、ダークすぎると却下され、代わりに単独アルバムとして発表されたという経緯がある。その結果として、JB特有の鋭いリフ、ゴツゴツしたビート、反復するグルーヴが徹底的に突き詰められた仕上がりになっている。全体は長尺トラックを中心に構成され、硬質でミニマルなリフを延々と刻むスタイルは、後にヒップホップのサンプリング・ソースとしても膨大に引用されることになり、Public EnemyやEn Vogue、Mary J. Bligeらがこぞってこのアルバムの断片を使ったのも象徴的。しっとりしたソウル寄りの楽曲もあるが、基本的には重低音とリズムのループ感が支配する、徹底的にファンクに振り切った内容。2枚組というボリュームも含め、ジェイムス・ブラウンの中でも特にハードコアなグルーヴを刻んだ一作。