RCサクセションの前身=The Remainders of The Cloverのギタリストであった武田清一を中心に結成されたフォーク・ロック・バンド、日暮しの「夏のこわれる頃」もまた、冒頭の「海へ来なさい」と同様に、星勝によってプロデュースされた楽曲。Twin Cosmosや原マスミのファンにもレコメンドできる、「向こう側」の世界へと一歩踏み入れたフォーク/ニューミュージックです。
細野晴臣プロデュースのオキナワン・テクノ歌謡「テクテクマミー」で知られるシンセ・ポップ・バンド、E.S. Islandが残した幻のニューエイジ傑作にして、彼ら夫婦が八丈島で暮らしていた際に「島でのハイでハッピーな日常の波動を音に」したという『南風 from Hachijo』からの「夢風鈴〈土〉」は、とてもトライバルで動的な魅力を備えたニューエイジ歌謡を堪能することが出来ます。
「世界初の民謡ハウス・ミックス」と銘打ち、ジャパニーズ・ハウス名手・寺田創一と、民謡歌手・金沢明子がコラボレーションした作品『金沢明子 HOUSE MIX I』からの「江差追分(前唄) 」では、北海道江差町の日本を代表する民謡が、クラブ・ミュージックというプリズムを通じて、近未来的なサウンド・デザインのアンビエント・ポップへと変貌を遂げています。
1989年から1992年まで活動していた、ヴォイス・アーティストのおおたか静流らによるグループ、Voice From Asiaが、青山スパイラルの展開していたCDレーベルである〈Newsic〉に残していた空想ミニマル傑作『Voice From Asia』からの「Sweet Ong Choh」は、民族楽器を用いた、ピースフルで透き通った響きのトライバル・ミニマル・サウンドが展開されています。
細野晴臣に「彼女の声にはシャーマンが住んでいる」と言わしめた女性シンガーソングライターであり、ヘンリー川原ともコラボレーションしている、宝達奈巳。そのデビュー・アルバムに収録されていた「朝 A-Sa 夢 Yu-Me 雨 A-me 火 Hi 光 Hi-Ka-Ri」は、現在のボーカロイド/合成音声音楽のオーパーツとして、改めて今のリスナーに届くべきポスト・クワイアの秘宝といえます。
マライアの面々がサポートした秋本奈緒美のアルバム『One Night Stand』からの「Tennessee Waltz」もまた、前曲の宝達奈巳と並んで、早すぎたボーカロイド/合成音声音楽のプロトタイプと言うべき楽曲であり、断片的な声ネタ風のヴォーカルと牧歌的で甘美なミニマルなシンセ・サウンド、無機質なマシン・ビートの取り合わせが美しい邦楽史に残る異常楽曲と呼べるでしょう。