1941〜42年頃、国際文化振興会が制作したSP盤シリーズの一部で、戦前の日本で録音された伝統音楽の記録。当時制作された78回転盤は60枚に及ぶ大規模なセットだったが、戦争やその後の散逸で現存するものはごくわずかとなっており、本シリーズは、その失われかけた記録を修復する試みであり、日本の伝統音楽の真髄を伝える重要な歴史資料でもある。本作に収められたのは民謡で、田植え歌や機織り歌、マグロやニシン漁の歌、そして子どもたちの唄まで、匿名の歌い手による24曲が並ぶ。宮廷の雅楽や声明、能、歌舞伎、琵琶法師の叙事詩といった正統の音楽に比べても、農民や漁民の声にこそ凄まじい力が宿っている。いまでは失われてしまった日本の土着の音楽の力を体感できる一枚。