世界各地のアーティストが「豆腐」という食文化を独自の音響表現へと翻訳した、実にユニークなコンピレーション『Tofu: Original Soundtrack』。イギリスのレーベル〈pleasant place〉のオーナーであり、ジャーナリストでもあるRussell Thomasによる著書『Tofu: A Culinary History』の刊行を記念して制作された本作は、豆腐にまつわるフィールド・レコーディング、DIYシンセサイザーによるエレクトロニクス、アンビエントなど、多彩な音楽的アプローチを通じて、豆腐という食材の歴史、神話、物質性、文化的な記憶を音響へと変換した意欲的なプロジェクト。
中国、日本、韓国、台湾をはじめとする東アジア・東南アジアの食卓で何世紀にもわたり親しまれてきた豆腐。素朴でありながら驚くほど多様な変化を遂げ、土地ごとの食文化や生活に深く根付いてきたこの加工食品を、本作では単なる食材としてではなく、人々の営みや歴史、文化をつなぐ存在として捉えています。
東京のプロデューサーaus(FLAU)による、豆腐の不思議な物質性を探る幻想的なアンビエント・エレクトロニクスで幕を開け、Rebecca Burdenは古代中国の神話と音楽が持つ破壊的な力に着想を得た重厚なエレクトロアコースティック作品を披露。twenty eyesは日本の狐にまつわる民間伝承の超自然的な世界を漂い、Yumi IwakiとTonia Koは豆乳が凝固し豆腐へと変化する神秘的な過程を、煌めくモジュラー・シンセシスと触覚的なサウンドアートへと変換しています。Yetsubyは温かな質感を持つ繊細なエレクトロニクスによって豆腐の持つ家庭的な安心感を表現し、Stella Chin-Ting Yangはタイや台北で収録したフィールド・レコーディングとシンセサイザーを融合させ、豆腐の多彩な食感やテクスチャーを音響化。さらにLookfar名義のLouie Zongは、発酵豆腐を取り巻く微生物の世界から着想を得た、深く湿潤なダンジョン・シンセへと踏み込みます。
後半ではNick Luscombeが東京の現役豆腐店で収録した親密なフィールド・レコーディングを通じて日常の営みへと回帰。そしてVGMシーンでも知られるbo enが、民俗的な祝祭を思わせる高揚感に満ちた楽曲で、まるで映画のエンドロールのようにアルバムを締めくくります。
日本、韓国、台湾、イギリス、アメリカのアーティストが参加し、アンビエント、エレクトロニカ、フィールド・レコーディング、モジュラー・シンセシスなど、多彩な音楽的実践が交錯。瞑想的であったり、遊び心に満ちていたり、時に奇妙で祝祭的であったりと、それぞれが異なる視点から豆腐という存在を捉えながら、ひとつの有機的な作品世界を形成しています。土地ごとの伝統に根ざしながら、異なる文化へと浸透し、絶えず姿を変えてきた豆腐。その歴史と神話、日々の営み、そして人々の共有する文化的記憶を、音楽というもうひとつのメディアを通して再発見する、食文化と実験音楽の交差点に生まれた興味深いコンピレーション。