電子音と生の楽器音の接触、そして'今'という瞬間の接触。
「コンタクテ」とは、'接触'のこと。電子音と生身の奏者(楽器音)の接触であり、そしてシュトックハウゼンのいう'瞬間形式'のそれぞれの瞬間の接触など、様々な意味を含んでいます。
'瞬間形式'について、シュトックハウゼンは、1961年1月12日ケルン西ドイツ放送の深夜音楽番組で次のように述べています;「近年、ドラマチックなフィナーレをもつ形式からは程遠い音楽が多く作曲されている。こうした作品には、クライマックスもその予兆もなく、さらに作品全体が発展していく段階もまったくない。むしろいきなり激しく盛り上がり、作品の最後まで'ピーク'を維持しようとしている。常に最大か最小であり、聴き手はどのように曲が進むかを予測することもできない。あるパッセージの一部という瞬間ではなく、一定の持続の一部分でもない。'今'への集中が、時という水平の概念を打ち破る縦線を作り、無時間的なものへと我々を導いている・・・」
様々な方向から飛び出してくる、ブーブーガーガーいう音や、暗騒音、打楽器、ピアノの音などに耳を傾けるうちに、聴き手は、無情に流れる時間が支配するこの世界から解き放たれ、とても濃密で不思議な音楽体験をするのです。
なお、「コンタクテ」は電子音のみの版と電子楽器、ピアノ、パーカッションのための版の2種類ありますが、ここでは2トラックとも後者の版によっています。