アルゼンチン・ニュー・ニュージックを代表する音楽家、エミリオ・アロ率いる五重奏団、クラン・カイマン(和名:カイマン族)のセカンド・アルバム登場。
更に徹底した抑制の下、催眠音と原始的な脈動で奏でられる高湿度の室内部族音楽。アルゼンチンのマルチ・インストゥルメンタリスト作家、エミリオ・アロが「架空の部族の奏でる音楽を空想する」というコンセプトで結成した5人編成のバンド、クラン・カイマン。デビュー作『Clan Caimán』(2018)は、ハイラマズ、VIDEOTAPEMUSIC、トータス、トミー・ゲレロ、マーティン・デニー好きなどに幅広く聞かれるアルバムだった。注目の2作目である本作『Asoma (英語でRises)』でもカリンバを改造したアロの創作楽器<カリンバフォン>がアンサンブルの要となって地域不明のエスニシティーを匂わせるが、高いミュージシャンシップを持つアルゼンチンの演奏者達をして前作以上に抑制を課した編曲と演奏には<故意の退化>という方向での進化(深化)が聞き取れる。「ヴォーカルもシンバルもファンファーレもありません」とアロ自身が説明するように、8つの楽曲には気を引く派手な編曲や和声進行上のクライマックスを捨て去った上でのメトロエスニシティー感覚が、その演奏の音場には怪しい生暖かさと催眠性が充満する。高湿度の空気を封じ込めた装丁デザインは今回もSebastian DuranとIan Kornfeld。